第5回インカレショート報告
コントローラ:加賀屋博文
 
 
 早いものでインカレショートが始まってから5年を経過し,秋のイベントとしてすっかり定着した感がある。大会のスタイルもかなり確立されてきているが,今回でもいくつか新たな試みが行われているように,まだまだ検討を要する点が残されている。ここでは,大会全般の中で,特に今後の参考となると思われる項目について報告を行う。
   
1.テレイン・地図

 今回のテレインである「白糸の滝」は,主要道路や川によって使える範囲が大きく分断されるため,予選,決勝で完全に範囲を分割して使用した。会場がテレインの隅に位置していた関係もあり,過去に例の無い,予選スタートバス輸送決勝AB共にバス輸送,予選トップスタート8:30などの措置をとった。当日は,心配された渋滞もなかったため,ほぼ予定通りに日程をこなすことができた。
輸送をバスに頼るのは危険ではあるが,このような制約の多いテレインでもショートが開催できたことにより,今後のテレイン選択の可能性が広がったと考えている。また地図の縮尺を1:10,000としたが,地図やコースの見易さ,狭いテレインを有効に活用できる面から,今後ショートでは1:10,000が標準となってゆくであろう。

   
2.Bファイナル

 前回大会コントローラー報告にもあるように,Bファイナルの運営負担は大きく,大会スケジュールを圧迫する要因となっていた。今回は前回の提言を受けて,全員に事前にスタート時間を指定し,決勝進出者はバカントとする方法をとった。また,決勝とBファイナルの時間帯を完全にずらすためにスタートを20秒間隔とした。Bファイナルをタイムスタートで出走させる限りにおいては,今回ように事前スタート時刻を指定することが一番運営上良いと思われる。ただし,20秒間隔というのは運営上も競技上も好ましくない。Bファイナルの順位にこだわらないのであれば,Bファイナルを2ないし3コースに分けてスタート間隔を広げるという方法も考えられる。

   
3.演出

 今後のショートのさらなる発展を考える上で重要となるのが,演出面の充実であると思われる。競技面は設定ウイニングに従い,テレインを最大限に生かしたコースセットをするという点において不変であるが,演出面は今後も試行錯誤をくり返しながら,変化してゆく必要がある。今回でも演出面は,5月の赤城大会を担当した役員を中心に,大型ステージ等の舞台,FM放送,有力選手を追走し
たリポートなどの新たな試みが行われた。今後ショートはさらに演出に力をいれて,観客には観る楽しさを,選手には注目されることによる緊張感(走りがい)を与えることがショートの発展につながると思われる。
 ただし,あまりに過剰な演出は,選手に競技としての魅力を感じなくなるさせる恐れがある考えられる。そのため,演出上の進化にはある程度選手のコンセンサスが必要となってくる。例えば,競技中に成績に関する情報(ラストコントロールから走っているときな
ど)が与えられるのはスタートが遅い(=予選上位)選手に与えられるアドバンテージであるとか,ラストスタートの選手には役員が追走してくるとかが周知の事実になれば問題はなくなるであろう。ただ,今回の追走レポートは現時点ではやや行きすぎの感があったことは否めない。演出に力をいれることは役員増につながり,大会会計を圧迫する恐れがあるが,演出の充実による観客の増加(=併
設大会への参加者増)を考慮すれば十分おつりがくるであろう。

 
 世界ではもはや確固たる地位を築いたショートディスタンス競技であるが,日本において継続的に行われているのはこのインカレショートだけである。それだけに今後とも運営者と参加者,両方の熱意によりこのイベントがますます発展してゆくことを願って,今回の大会コントローラー報告を終わりにしたい。