コントローラ報告
第6回インカレショートコントローラ:大西淳一
 
 
 インカレショート実施規則第12.1条に基づき、大会コントローラーの報告を記す。
 「大会コントローラー」とは、実施規則によれば「日本学連を公式に代表し、主管者に対して派遣される」者であり、その主な任務は「実施規則が遵守されていることを確認すること」、「必要な事項については技術委員会との協議を行う」こととなっている。そこで本報告では、技術委員会で議論された項目それぞれについて説明する。

コンパクトな実行委員会による効率運営
 実施規則では、実行委員会は1年前までに組織することとなっているが、今回の実行委員会の発足は大会6ヶ月前という遅さであった。また、大会コントローラーの指名もほぼ同時であった。このため、準備が順調に進むかどうか不安な面もあったが、地図や渉外の準備がすでに進んでいたという今回の特殊な事情があったため、大きな問題は発生しなかった。また、東海地方の人材難から、実行委員長をはじめ責任者レベルの人たちに負担が集中したが、そこは有能な人材がうまくこなしていた。インカレショートの運営体制としては、第5回大会を除いて今回のような「コンパクトな実行委員会」、すなわち「少数精鋭による事前準備→その他は試走と当日のみ出動」という形が続いており、経費の面からも有効な策であると考えられる。

ショートの地図は1:10,000を標準とする
 地図作製業者と実行委員会では当初、地図の縮尺を1:15,000とする計画であったが、5月の技術委員会の議論で1:10,000のほうが適切であるという結論になった。理由としては「1:15,000と1:10,000の地図ではオリエンテーリングの内容が異なってくる。その観点から、ショートでは1:10,000のほうがふさわしい。また、東海地方に1:10,000の地図でトレーニングできる機会を提供する意味は大きい」ということであった。なお、1:15,000の可能性も残すため実施規則の改正は考えていない。

コントロールの器具・識別記号に関する規定
 実施規則では「コントロールの器具は、コース上のすべてのコントロールで同一のものを使用する」、また「コントロール識別記号は、数字の高さは5〜10cmで、太さは5〜10mmで書かれ」とある。この2点は、第4回大会前に改正された実施規則で加わった条項であるが、第4回(菅平)・第5回(富士宮)大会ともに遵守できなかった。今回はなんとか、十分な数の同種のコントロール器具と、コントロール識別記号を書くプレートを確保できた。しかし、第4回大会のコントローラー報告にもあったように、地方開催の場合は、機材の確保や製作に苦労する。この条項については今後、解釈を拡大したり、基準を緩和したりするなどして対応していく必要がある。

シード選手の選考態勢
 インカレショートのシード選手は春のインカレと同様、実施規則では「理事会が決定する」となっているが、クラシックではすでに技術委員会が理事会に対し該当選手を推薦する態勢をとっており、ショートについても今回から技術委員会が選手の実績調査と推薦を行った。

シード選手の選考方法の公表
 技術委員会がこの春にインカレクラシックで選手権クラスに出場した選手を対象に行ったアンケートの結果、シード選考の方法・根拠を公表してほしいという意見があった。しかし、一般に陸上競技や水泳とちがって、オリエンテーリング選手の実力を、複数の大会実績により総合的に判断することは難しい。これまでのシード選考でも、ある程度の基準を設けていたものの説明するとなると複雑になるので、公表は見送ってきた。今後は、簡単な形での公表を考えている。なお、今回の選考基準は次の項で触れる。

シード選手の適正人数
 インカレショートのシード選考のコンセプトは「予選各組に有力選手を均等に振り分けることにより、各組の決勝進出ラインをなるべく均等にする」ことである。実施規則ではシード選手の人数に関する規定があるものの、これは十分な議論を経て決められた数字ではなかったため、今回、技術委員会でその適正人数について議論した。しかし、技術委員会内では「これまでより若干多い人数になるだろう」ということでは一致したものの、具体的な数値までは結論が出なかった。そこでとりあえず今回は、「昨年のインカレショート以降の主要大会で好成績を2つ以上あげた者。とくにインカレ(ショート・クラシック)を重視する」という基準で選考したところ、男子16名、女子12名となった。これ以上選出するためには大会実績をより詳しく調べなければならず、それは今回見送られ、この人数のまま最終決定となった。なお、「シード選手は予選各組に(厳密に)均等に割り振るべきだ。(すなわち男子なら3の倍数、女子なら偶数)」という意見も寄せられたが、同程度の実績をもつ選手が複数いるなど、線引きが難しい場合は対応できないとした。

日本代表選手の地区選考会免除
 過去にも話が出たことのある問題である。ユニバーシアードやジュニア世界選手権の代表選手が、その強化合宿参加のため、または本大会出場のため、地区選考会に参加できない場合の対応についてである。今年度の幹事会でも議論していただいたが、まだ結論は出ていない。国際大会へ日本代表で参加するほどの選手が、国内大会の選考会の影響を受ける事態は避けるべきであると技術委員会では考えており、新たな規則の制定など今後も検討を進めていく。

欠員補充の方法
 今大会では、女子選手権クラスに欠員8(北東4、東海3、中九四1)が生じた。選手権クラスに欠員が発生したのは第2回大会以来であった。第3回大会以降はインカレショートが広く認知されるようになり、欠員が発生するおそれがなくなったため、欠員補充の方法について事前に公表することもなくなっていた。しかし今回は(おそらく)学連加盟員の減少という理由から欠員が発生した。「インカレショート出場者数及びその配分に関する規則」第6条により、技術委員会は実行委員会よりその対処を委任された。結果として、再配分を希望する北信越・関東両地区に、旧出場枠数の比(11:44)に応じて欠員8が2・6(端数は四捨五入)と割り振る決定を下した。

実況放送(演出)のガイドライン
 インカレではここ数年、レースの実況放送や大型ボードによる速報など、実行委員会が演出にますます力を入れてきている。その背景には、結果を早く伝えたい、レースの見どころを紹介したい、勝者をもっとほめたたえてあげたい、といった欲求があるのであろう。大会を盛り上げ、観戦が楽しくなるような環境を提供することは、併設大会参加者や観客の増加、さらには学生参加者の継続的な参加にもつながるものと期待される。技術委員会としてもこの流れをバックアップしたいと考えており、5月の委員会で演出に関して次のようなガイドラインを示した。「会場での放送内容にはとくに制限を設けない(ビジュアル区間がある場合でも)。ただし、優勝・入賞を決するカウントダウンは禁止する」。これを受けての今回の実況放送は、コース上いくつもの地点の通過情報を伝えるなど、きめ細かな情報提供がなされ、観戦に役立っていたと思われる。今後の大会でも、実行委員会が知恵を絞りさらに進歩・発展した演出が見られることを期待したい。

 以上、長い報告となったが、今後インカレショートを運営する方々は参考にしていただきたい。また、技術委員会でも、インカレ・インカレショートをより良くしていくために、実施規則の一部改正も視野に入れ、毎回の大会で発生する一つ一つの事例をじっくり検証していく。意見や質問は大歓迎である。
 最後に、大会開催に向けてご尽力いただいた実行委員会と学連関係者の方々、また大会会場にいらした地元関係者と参加者の皆さんに対し、大会の円滑な運営にご協力いただいたことを感謝し、報告を終わる。