【テレインについて】
今回のテレインは北半分が1990年度のインカレリレーが行われたテレインである。比高が少なく走行可能度が高い方向維持を要求するオリエンテーリングに適したテレインであるといえる。
ショートの1週間後に全国スポーツレクリェーション大会が開かれ、坂下町でオリエンテーリング種目が開催されることが決まったので、この大会とタイアップで地図作成が行われることになった。会場として椛の湖総合グランドが決定、その周辺も地図にのせることになる。ショートイベントがビジュアル性を追求するものである以上、レイアウトを考慮して地図の範囲を確定した。
【地図について】
テレインの範囲が広大であるため当初、1:15000で作成される予定であったが、日本学連技術委員会の強い要望もありショートイベントの世界的な流れである、1:10000で作成、走行可能度も4段階で表現された。
予選地区の旧地図があったこともあり、比較的順調に調査できたが、作図の段階で業者がちょうどその時に別の大会を抱えていたこともあり、予定より大幅に遅れた。その後も業者が暴力事件に巻き込まれる不運なトラブルもあり、地図が実行委員会の手元に到着したのは大会前日の日の入り前であった。競技で使われる地図で試走を行えなかったため、地図表記、ディスクリプション表記でしっかりと確認がなされなかったのは問題だろう。
【コースについて】
予選は旧地図範囲を使ってオリエンテーリングの基本である直進技術を強く要求するコース。コースによる振り分けも大きくはせず、(男子にいたっては3コースだが振り分けを2つにしているところもある)競技者の流れをつかみやすくしたつもりである。
決勝はビジュアル性を求めたレイアウト、パブリックコントロールを意識して設定、急峻な片斜面での課題も盛り込み、予選とはまったく違うタイプでオリエンテーリングの総合的な技術を要求するコースにした。
今回はBファイナルを設けた。Bファイナルは本来なら教育的なコースを提供するのが理想なのだが、Aファイナルのイベントとしてのステイタスを確立する上で学生の観客はどうしても必要で、運営の手間も考えると、Aファイナルが始まる前にゴールする時間帯での一斉スタートという形になった。ただ、Bファイナル参加者の男子2人が、Aファイナル決勝スタート地区に現れるというハプニングがあった。本人たちはAファイナルの競技が行われるテレインを見てみたいと考えただけなのだろうが、選手と接触する可能性があったことは問題だ。競技エリア、時間を完全に分けるか、Bファイナルの開催そのものを見直す必要があるのかもしれない。少なくとも今回よりもBファイナル参加者を管理する必要があるだろう。
予選と決勝でまったく異なるテレイン、コースを用意できたことは成功だったと思う。
併設クラスは選手権の予選と同じコース、あるいは同じレッグのコースを用意した。もちろん、経費削減が大きな理由だが、選手権に出場できなかった選手、あるいは大学でコーチをしているランナーにとってはタイムを比べるだけでなく、より深い議論の場を提供できると考えた。
【結果について】
残念ながら予選通過タイムはコース間で大きく差が付いてしまった。
course 1st 1~3ave. 12th 1~12ave. 20th 30th
WEQ1 20:55 21:24 26:01 23:34 29:18 32:55
WEQ2 20:05 21:36 30:02 25:33 36:09 40:59
MEQ1 19:13 21:12 26:42 24:17 28:13 31:39
MEQ2 21:30 22:47 25:45 24:16 27:24 30:18
MEQ3 20:03 21:34 25:51 23:58 27:28 29:07
WEQ1は1〜42位まで前と2分以上の差になることはなく接戦になっているのだが、WEQ2では4〜5位、11〜12位で大差が付いてしまった。地図を見る限り振り分けによる差はないように見えるが、1番コントロールと4番コントロールはQ1よりQ2の方が地形の特徴が少ない上、見通しもやや悪くてミスした時にロスタイムが大きかったのかもしれない。
MEに関しては村上(Q1)、石井(Q3)の二人が好タイムをマークしている。12位のタイムでQ1とQ2で1分近く差があったが、優位な差とは認められないだろう。
決勝は女子が予選は振るわなかったもののプレッシャーの少ない位置でスタートできた酒井(日本女子3)が、河野(日本女子4)とともにトップゴール、赤石(東農4)、伊藤(筑波3)といった実力者の追い上げをかわし逃げ切った。辻井(京女4)、吉田(茨城4)は大健闘、インカレ初入賞を果した。
男子はめまぐるしく順位の変わる中、石井(東北4)とのライバル関係をうまく利用した村上(筑波4)が念願の勝利。夏の遠征で日本から唯一パークワールドツアー夏シリーズに参加、世界一流選手と寝食を共にしてきた篠原(筑波3)が見事に2位に食い込んだ。4位の高橋(筑波3)を含め筑波大から3人の入賞者が出た。水嶋(静岡4)も最後まで優勝を争い会場を盛り上げた。上野(東京3)は3秒差で東大の連続入賞を守った。筑波大、早稲田大、慶応大、金沢大が前評判どおりの活躍を見せた。
新人特別表彰は決勝でも好タイムをマークした榎本(早稲田1)、本多(東北1)が獲得。
男子のウィニングが規定の25分から遅れてしまったが、天候が悪く、特に男子のコースは急峻な斜面のレッグが多かったことで、影響を受けてしまったためである。
【中間地点での報道】
男子の5番、女子の2番コントロール付近にイベント役員を配置し、通過情報を携帯電話で会場に送った。このことはプログラムで触れてはいるものの、具体的にどこでどのように役員が配置されているか公表しておらず、役員が突然見えて驚いた選手も何人かいたようである。
今回は競技の役員としてではなくリポーターとして、テレイン内に役員を配置したが、コースの何%の位置にレース状況を得られる場所があるということはプログラムで明示する必要があっただろう。 |