霧ヶ峰ロゲイニング2014のコースをどのように設定していたのか、解説します。 手元に霧ヶ峰ロゲイニング2014のコース地図を広げてお読みください。 2013年と比べて地図範囲を西へシフト 2014年のコンセプトは西側へ競技範囲を拡張することでした。 2013年まで競技範囲のほぼ西端に会場がありましたが、これはロゲイニングのコース上、あまりよい配置とは言えませんでした。今回、西側 に競技範囲を広げることによって、ロゲイニング競技のフィールドとして、より戦略的な面白いコースを組むことができました。 2013年までは会場から遠い競技範囲東側を拡張していましたが、これで競技が充実するのは5時間の部の参加者ばかりでした。ところが今回は、会場近くの フィールドを新規に地図化することで3時間の部のリピータにも新たな楽しみを提供することができたのです。新規に図化した範囲には、快適に通れる森の中の 防火帯や林道があり、しっとりと気持ちの良い森です。 もともと東西に長い霧ヶ峰ロゲイニングの競技範囲をさらに西へ伸ばすことによって、今の縮尺ではA3ノビ用紙サイズには入らなくなります。そこで今回は フィールドの東側をカットし、最東端を白樺湖の東岸としました。これにより地図範囲が2013年と比べて西側にシフトしたことになります。参加者の顔ぶれから、これでも満点は出ないだろうと想像しました。結果もその通りになりました。 新規地図範囲に誘導した配点 新規範囲を楽しんでいただくために、誘導的な点数配置にしています。この範囲のコントロール密度を高くして、あらゆる層の参加者を呼び込んでいます。3時 間の部では最高得点となる151番コントロールもこの新規範囲に設置しています。新規範囲は最後に急斜面になりますが、参加者を急斜面から引きずり降 ろすような配置にしています。 美ヶ原トレイルラン&ウォークとの影響を配慮 今年で4回目を迎えた「美ヶ原 トレイルラン&ウォーク」。昨年までは8月末ごろ開催されていましたが、今年は開催日が7月5日(土)でした。しかも、コースは霧ヶ峰ロゲイニングの競技 範囲を通っています。競技日は1日ずれているので、競技者同士が重なり合うことはありません。しかしコントロール設置など準備の美ヶ原のレースと重なるこ とになります。 「美ヶ原トレイルラン&ウォーク」のwebページよりコース図を入手し、「美ヶ原トレイルラン&ウォーク」のルートをわずかに避けた位置にコントロールを設置しました。美ヶ原の選手がコントロールフラッグをいたずらすることはまず無いと思っていましたが、美ヶ原主催者の撤収隊が誤ってコントロールフラッグを撤収してしまう事態を心配しての配置でした。 その結果、殿城山分岐からゼブラ山までの区間に設置できるコントロール数が少なくなっています。それを補うために個々のコントロールの配点は高めに設定しています。このルートは霧ヶ峰の中でもイチオシの素敵な場所ですから、ここへは少し誘導的な配点になるようにしました。 また、殿城山から白樺湖に抜けるルートは美ヶ原レースのルートと完全に重なっていました。そこでコントロール位置はこのルートから一歩奥まったところに配 置しています。大会直前に現地入りすると、美ヶ原レースのコース上にはマーキングが設置されており、これを確認しながら最終的なコントロール位置を決定し ました。 ここのルートにおけるコントロール設置と撤収は、殿城山から行くのではなく、白樺湖から往復するのが効率的です。運営のマンパワーを考えてコンタリング道 (高度を維持しながら斜面を水平移動する道)で設置、撤収できるようになっています。この構造を見抜いて最小限の消耗でここを高得点で通り抜けたのは 「チーム大福」だけでした。 日本百名山一筆書き 2014年春から秋にかけて、アドベンチャーレーサーの田中陽希が徒歩とカヤックのみで日本百名山の一筆書きツアーを実行しています。7月6日には美ヶ原 から霧ヶ峰(車山)にやってくる予定でした。これにちなんで、日本百名山の車山山頂に100点コントロールを置きました。 田中陽希は結局「霧ヶ峰ロゲイニング2014」が行われた日の翌日(7月7日)に車山に到着しました。 ちなみに田中陽希はスキーオリエンテーリング競技の元日本代表。2009年に行われた世界選手権(日本の北海道で開催)に日本代表選手として参加していま す。このときに同じ日本代表チームだった黒田幹朗は、霧ヶ峰ロゲイニング2014の運営スタッフとして加わってくれました。 熱中症への配慮 この季節は、晴れれば熱中症の心配をしなくてはいけません。再遠方の白樺湖畔に給水所を設ける事にしました。ただし自分たちでエイドを出すわけではなく、公園内の湧水で水分補給していただこうと思いました。それが37番「八臣の雫」です。 新しい白樺の森 白 樺湖近くの84番がこれ。昨年まではこのあたりは低木や草が生い茂る森でした。しかし白樺湖新景観回復事業で白樺の疎林となり見通しのよい場所となりまし た。このときの刈払い作業で新しい道も作られました。この新しい道にコントロールを置くことで、新しい体験を参加者に提供しました。 人道トンネルの配慮 主要道路である「ビーナスライン」をくぐる人道トンネルが一か所あります。ここはコース上で重要な通過ポイントであるにも関わらず、運営にとっての鬼門で もあります。この人道トンネルは天井が低く、しかも周囲から土砂が流れ込んで入れ地面から天井までの高さが低くなってゆく構造になっています。天井は道路 工事が終わったときのままの状態でボルトが剥き出しになっています。 6年前の霧ヶ峰ロゲイニングでここで最初の負傷者を出してしまいました。その後、競技説明や地図上で注意喚起を図ってきましたが、2年前にまた負傷者が出てしまいました。 そこで昨年からここにコントロールを置き、選手の動きを一旦止めるようにしました。さらに役員を配置して注意喚起を行いました。その結果負傷者はゼロ。役員を配置するのでついでに給水所を兼ねてもらいました。 今年もこの対応を取りました。人道トンネル内にも注意喚起するテーピングを行いました。今年は天気も良かったので、ここで給水する人も多かったようです。 しかし来年はケガ防止の処置を取るのみで、役員配置は止めても良さそうです。 ベストなルート選択は? 上記の通り、いろいろな要素が絡み合ってコースを決定しています。配点は全体のバランスを考えつつ、今年のコンセプトに基づいた傾斜配点をしています。気 を付けているのは、初心者にも中級者にもルート取りのバリエーションや得点の緩急がつくようなコース設定にしていることです。 チームによって体力レベルや得手不得手があり、さらに霧ヶ峰の場合は気象条件が絡んでくるので、どれがベストルートかはチームによって変わります。唯一の正解はありません。 想定外の渋滞 今回5時間の部では遅刻チームが多めでした。聞くところによると、車山スキー場のリフトが渋滞していたことが主な理由だそうです。夏山リフトが渋滞するな んて見たことがないのですが、ちょうど団体さんが到着していたのかも知れません。ロゲイニングの場合は、こうしたリスクも含めてレース管理が求められま す。 「早めに会場近くまで接近しておく」というのはロゲイニングのセオリーなんですね。やっぱり。 |