第13回世界大学オリエンテーリング選手権大会報告書

黒河 幸子
2003年度筑波大学卒

報告書


内容

  1. 事前準備
  2. トレキャン期間中
  3. ユニバー本番
  4. 良かったところ
  5. 反省点
  6. ユニバーを終えて

事前準備

4月になって研究室配属され、生活のリズムが一変した。9時30分~21時まで研究室にいなければいけない生活セレの結果は5位のボーダーライン。結果待ちの間は自分に日本代表としてユニバーに行く資格があるか考えていた。考えた末残った気持ちは「ユニバーに行きたい。がんばればトレーニングできる」であり、ありがた いことに推薦をいただけることになった。そのため最初に考えたことは時間を作る事だった。5月中は週2回朝5キロ前後の地図読み走、火曜の朝10キロ前後のLSD、木曜の朝の筑波山登りor夜のスピトレ、土日のオリエンテーリングというメニューだった。6月に入り、自分の体力のなさを感じて少しハードにしようとした。ここで必然的に削られる睡眠時間と1ヶ月以上休日がないのが重なり慢性的に疲労が抜けなくなった。しかし休むことに罪悪感、焦燥感を抱き、体を休めるとストレスで気が休まらないのでジョギングで距離だけ稼ぎ、合宿も与えられたメニューをなんとかこなすのみという参加の仕方になってきた。6月23日からはジョギングすら出来なくなったが、それを「一番下手な人間が怠けている」としか考えられなくて走れないけど休めない、最悪の悪循環で気が狂いそうになった。そんな状態が3週間続いて7月13日に最後のユニバー合宿にのぞんだ。その日の日記より

「最後の合宿です。調子悪いとか言ってる場合じゃない。やんなきゃ!って感じでのぞんだ。でも、精神状態がそのままオリエンに反映されるタイプなのでそりゃもうつぼるつぼる…。コンプリートロストして40分くらいさまよい、まだメニューが残ってるし運営者に迷惑かかるし帰ろうかなぁ。。。と思ったけど、ここでまたリタイヤしたら、もう2度とオリエンが出来なくなる気がしてメニュー終了時間までには帰れると思い、最後までやった。走る気力もなくて、いろんな考えが浮かんでは消えて何がなんだかわけわかめ。ぐるぐるぐるぐる考えて泣いてでも、やっぱり最後に残るのは「自分の好きなことをしている」だった。"好きなこと"は体を壊し精神を壊してまですることじゃない。地図もプログラムも見たくない人間をオリエンティアとはいえない。人間関係を煙たがるのを人間とはいえない。インカレを恐れるのは愛好会員ではない。今自分は何をやっているのか?何がしたいのか?何が欲しいのか?目指す先は筑波大OL愛好会の勝利。愛好会の。愛好会員の。では、そのためには何をしないといけないのか?それはストレスをためないこと。そのためには余裕を持つこと。余裕を持つには残された時間を上手く使わなければいけない。1日単位で見たら残された時間は7時~9時30分と21時30分~24時これを土日をのぞく5日のスパンでみてストレスをためずに休みを取るのが最重要課題である。ストレスをためず休むには十分トレーニングすること。走ること、地図を読むこと。今までは疲れるからと言う理由でトレーニングをしなかったが逆だった。」

一番重要だったのは時間を作ることよりも、効果的にトレーニングをする。そして休む時は休む。であることにやっと気付いた。周りががんばっている姿はとても刺激になる。しかし、自分の体調、環境は常に変化しているので、それを考えてこそいいトレーニングが出来ると思った。そこで7月15日~出発までは週3回朝集中して3キロ前後の地図読み走、週2回夜追い込んだスピトレ、土日のOLという形を取った。

トレキャン期間中

トレキャンではブルガリアのテラインで自分にどういうOLが出来るか(どんなチェックポイントがとれるか?どれくらい走れるか?どんな技術が使えるか?)を見極めようと思ってのぞんだ。最初は時差の関係か体が動かなかったけど徐々に動くようになった。虫がひどくて止まると群がってくるのがどうにもならないことだけど気になった。ブルガリアテラインはのっぺりとしていたり急に微地形の沢が切れ込んでいたり、スーパーAやひどいいばらなど実に気まぐれだった。しかし、「自分の進む方向をきちんと定めて動き始めないとどこへでも、どこまでもいけてしまう。適当にアタックしたら丸の中へは入るけどそこでうろうろしてしまいピンポイントで見つけられない。」反対に「変なとこへ行ってもあまり苦労せず走って戻れる。うろうろすればポストは見つかる。」ことで慎重さを欠いたオリエンをダメだと思いながらも続けてしまい、99年JWOCのショート予選コースを走ったときそのダメな面が一気に露呈された。その日の日記より

「今日はJWOC99のショート予選と同じコースなので、ちゃんと走ろうと思っていたら、走るのに夢中になり、プランも立てず、C.P.も考えず直進あるのみで走ってしまった。結果ものすごい大つぼり。つぼりと言うか何をしているの?何もしていない状態。その後プランが立たず(立てられず?)訳がわからないまま走るだけになってオリエンが出来ないまま終わったチェコの記憶ばかりがよぎっていた。何のために海外まで来てトレーニングしているのか?自分に何が出来るのか?何がしたいのか?今でこれならユニバーではどうなるのか?目指すものはインカレインカレと言ってきたが、インカレを楯にしてユニバーを過ごそうとしている自分に気付いた。大義名分を作って甘えていた。いろんな事をどこかで割り切るのが必要だけど何を境界としていいのかすら分からない。でも、日本のほかの選手を気にしてタイムを近づけようと走り回るのではなく遅くてもきちんと回ること、テンポを作ることが私に出来ることと思った。プランの後にチェックがきて、それを繋ぐ手段として足がいる。」

甘さと変な気負いがあった。今自分に出来ないことは本番でも出来ない。自分に出来ることを繋いでOLしなければと思い知りBegun Cupの時はそのことに気を付けた。相対的なタイムは今更気にしてもどうしようもない。自分のベストを尽くすための練習をしておかなければいけなかった。

ユニバー本番(各日の日記より)

クラシック

「スタートにつく。信じられないほど落ち着いていた。1ポはセミオープンと疎林とAとフルオープンとBが混じりあい、2.5メートルコンタの補助コンなどわからず、少しずつ植生を頼りに進む。まぁ、いい出だし。3ポでミスったけどいつも通りのミスなので次を慎重に。フルオープンを走るロングレッグは遠くに見えるピークをまかないといけないけど下が砂+岩で進めど進めど遠い。6ポのロングレッグの途中で長いなぁと思い始めたが次から次へと未知の植生と地形が出てきてつぼりはしたけど最後まで走ったし、考えたし、オリエンをした。結果はびりから2番目。結果は結果だからなんともいえないけど、その数字の裏には自分にしか分からない経過がある。今回は自分の進んだルート、取ったCPが全部書ける。JWOCの時と違って、今回は最後までオリエンテーリングをした。今回は"レース"をした誇りが持てる。」

ショート予選

「1ポに行くのに、同時スタートの他の2人の選手とは明らかに違い動揺。違う方向に気を取られたままきちんと直進せず、右にずれているなぁと分かりつつもずるずる行ってしまい気付くと2ポにいた。3ポはしゃんととったけど、4ポで道を回るかヤブを切るかで迷い、大きな沢が絶対分かると思ってヤブを進むとここのハッチはいばらで方向維持、距離間隔がわけわかめになり、つかめると思っていた沢は一向に出てこず、とにかく下ると沢が出てきたけど明らかに方向がおかしい。やっとポストを取った後もヤブにまかれ、ぼ~っとしてしまった。反省をした時ルートを書けない部分があるレース。インカレで痛い目見たはずなのにまたやってしまった。情けなく悔しい。出来るならもう一度走りたい…。」

ショート決勝

「決勝もシンプルなプランを立てられないのと、課題(苦手)にしている高さ感覚を持ったヤブ+尾根切りがうまく行かず最後までがたがたおたおたしたレースだった。」

リレー

「レースは今までの集大成。つぼるところはつぼり、ミスしなくても遅い。でも、リレーでは走る、考える、ペナらない。で丁寧にまわる。最初のヤブ、微地形地帯はわけがわからず長く感じた。(中略)表彰式中宮内さんが帰ってきた。何ともいえない表情をしていて、その気持ちは分かる気がした。」

良かったところ

反省点

ユニバーを終えて

 ユニバー出場が決まってから、本当にいろんなことで頭を使ったが、今考えると使うべきときに使ってなくて、気付くのが本当に遅かったと思う。トレーニングのストレスは報告書や経験者に相談することによってもっと早く解決できたと思う。合宿やトレキャン、ユニバー本番も具体的に目標決めをしてのぞむことで一つ一つ大切に活用すればよかった。もったいないことをしたと思う。「インカレリレーで速い選手になりたい」と言ってきたのがただ、「合宿や本番で遅くても、しょうがない」に逃げるための楯に使ってきた結果の成長できてなかった自分にも気付いた。目標ではなく「しょうがない」と思うための逃げの手段に使った弱さを情けなく、もうこんなことは絶対しないと心に誓う。私のユニバーは本当に最初から最後まで自分にしか終始してなくて申し訳ないけれど、この報告書を見る人へ(インカレを目指す学生?2年後のチェコユニバー代表?速くなりたいとがんばっている人!)。周りの人の意見、過去の報告書は自分の未来日記の可能性があります。自分に置き換えて分析し、重要な部分を見出した人が同じ間違いを繰り返さない人だと思います。「自分なりに」は大切なことだけど、何をどうしたら自分なりなのかは本気で考えないと分かりません。私は痛い目を見てやっと考え始めました。今回学んだ最大のことは何においても「何をどうするか」を考えることです。「(金曜は課題があるのでがあるので)木曜日にスピトレをして金曜は休む」「(平らで走れるので)コンパスを見てここまで走る」「(おなかが痛いので)アイスは食べない」などなど。

最後になりましたが今回の遠征でお世話になった方々(特に加賀屋さん、寿理さん、尾上さん)にはもう本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。このままではもったいなくて終われません。日本のOL界をもっと元気に出来る選手になりたいです。


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