第14回世界大学オリエンテーリング選手権大会報告書

原 響子
2003年度 千葉大学卒

報告書


内容

  1. ユニバーまでの準備
  2. レースの結果に対する評価
  3. 反省(今後へのアドバイス)
  4. チームに対する要望
  5. 最後に

ユニバーまでの準備

1 コーチングの依頼

代表に決まった4月当初は自分だけ場違いな気がしてやる気が出ない状態であった。 全日本チャンプの番場さんを筆頭に、女子メンバーは全員過去のICクラシックやICSで複数回入賞しているが 私だけ実績が一つもなかったので不安や焦りを感じていた。 そんな時に加賀屋寿理さんのおかげで松澤俊行さんにコーチ依頼を、という話になりお願いした。 良いお返事を頂くことが出来て、アドバイスやメールのやり取りで無意識のうちにプラス思考になり、 ユニバまでの残された貴重な期間を積極的に取り組もうと思うようになった。

2 トレーニングサイクルの確立

週単位のサイクルを作り、変化をつけるようになり何も考えずにボーっと走ることが少なくなった。 創意工夫のなかった以前に比べ充実したトレーニングが出来たように思う。 週に「スピトレ1回」「LSD90min1回(long対策)」「朝の読図走30min*2回」をやる計画。 残りはその日の体調に合わせて疲れ抜きやダッシュを数本入れたjog、イメージトレーニングjogなど低負荷で繋ぎ週末は合宿など。 木曜は完全restで地図を読む日にした。 ただ、朝の読図走はほとんど実行できず。 本番でも動きながらの地図読みに練習不足を強く感じた。 出発前の1週間は調整を意識し、疲れを溜めないよう練習を軽くして出国した。

3 強化合宿

特に効果的だったのは、頻繁に合宿があったことだ。 西脇さんをはじめとするスタッフの皆さんに支えられてオリエンテーリングの機会が多く持て、 またチームメイトと顔を合わせる機会が持てて皆の頑張りを感じモチベーション維持にもなった。 個人的には、消化不良できちんと反省が完結しないまま次の週末がやってくることがあったのでその点は反省している。

4 種目決定・目標

今回から予選がなくなり全て決勝レースになり、どの種目を走りたいかチーム内で調整して決めることになった。 relayは一番好きだしJAPANチームで走りたいのでまずメンバー入りを目指すことにした。 個人種目は、sprintは一度も走ったことがなく苦手意識が強かったので却下、long・middleの順に走りたいと希望した。 5月中旬の合宿で種目を決定。 私はrelayをJAPANチームで走れることになった一方、その前日のmiddleは温存ということで結局longとrelayの2本だけになった。 連戦に耐えられる自信はあったしmiddleは走りたかったので正直ショックだったが、 relay代表になれたことは光栄だったのでそちらに専念することにした。

出場種目が決まってすぐには本番での目標が立てられなかった。 自分が世界でどのくらい通用するのか全く予想がつかずトップ比130%などと言われてもそれが可能なのか、 達成したら心から喜べるのか想像がつかなかった。 しかし実力の確認、トップとの比較を重ねるうちに「ベストを尽くせばこのくらい」という相対関係が徐々に実感として湧くようになり、 130%は魅力的な目標になった。 目標が持てたことはやる気の維持に効果的だった。 強いて言えばもっと早い時期にこういう意識が持てていれば良かったと思う。

レースの結果に対する評価

「現実は厳しかった」の一言であった。 結果はlongがトップ比170%、relayが152%と目標の130%に遠く及ばないものだった。 特にrelayは14チーム出走中14位という非常に厳しいものだった。 スピードテレインを1レース通じて走り切れるだけの体力が身についていなかった。 さらに基本技術の全ての面において海外選手に劣っていた。 登板力だけが海外選手に引けを取らないと感じた。

Long

当日、スタート前のウォーミングアップエリアで今まであまり出て来なかった岩・巨岩・岩石群などの特徴物が入り混じったエリアが存在し、 それらの区別がつかないままスタート時刻が迫ってきて、不安が残ったまま枠に入った。 始まったとたん、岩石地帯の連続でずっと宝探しのようなレースをしてしまった。 内容がとにかくひどかった。 序盤は岩に気を取られているうちにそれ以外の初歩的な部分でミスを連発し、 後半は集中力が切れて次のフラッグではないものに向かってプランを立てたりして手におえなかった。 チェコまで来てlongとrelayの2本しか走れないのに、そのうちの1本がこんな形で終わってしまったと思うと悲しくなってきた。

この不甲斐無い結果の原因は、①トレキャンとはタイプの違うテレインに対応できなかったこと②日本では体験したことない 長距離のレースに集中力が持たなかったことが挙げられると思う。 個人的に、テレインへの対応力と長丁場のレースには自信があっただけにショックだった。 考えてみると長時間レースペースで走る機会がなかったのに、LSDやマラニックなどの長時間低負荷のトレーニングをこなしたことで longを走り切れるという過信があったように思う。 まだまだ練習が足りないことを目の当たりにした。 今まで4年間競技をやってきて、一番悔しいレースだった。

Relay

longが終わって自信喪失しrelayまでの中2日は不安との戦いで、気分転換を心がけた。 当日には気持ちも落ち着き、良い状態でスタートを迎えられた。 タッチを受けてからは、ゴールするまであっという間だった。 4走なので他チームの選手を一人も見ることがなく完全に一人旅だった。 日本でやるのと同じようにミスをして焦ったりつぼったりしたが、自分らしい内容のレースではあった。 浮き彫りになった課題も日本でのそれと同じで、外国だからといって特別ではないとわかった。 技術的な反省は多かったけれど、世界との差を体験でき、このチームで走れただけでもチェコに来て良かったと思えた。 JAPAN女子チームは3大会振りの完走ということで最低限の仕事はしたと言われたが、もちろん達成感など微塵もなく、悔しい気持ちだけが残った。 14チーム完走中の14位だ。 世界の壁は厚く厚く、気が遠くなるほどの差を感じた。 しかし世界を生で見たことで、漠然としていたものが想像がつく範囲だということがわかった。

 リレーで世界と勝負するには集団に付いて行けなければ話にならないということを第一に言いたい。 ハイスピードでのナビゲーション・競り合いの練習をもっとする必要があると感じた。 自分のペースを保って、というのも大事だが、競り合いに加われないでマイペースで走っても遅いと感じた。

反省(今後へのアドバイス)

オリエンテーリングは世界共通

海外だからといって、急に特別な技術が必要になるわけではない。 もちろん日本にないような植生や地形はあったので、事前の地図の読み込み練習や現地でのトレキャンは効果的だったが、 オリエンテーリングは海を越えてもオリエンテーリングだった。 私は初の海外ということで過剰に意識してしまい何か別の特殊な競技をしに行くような気になっていて、 日本にはない珍しい部分に気を取られて無意識のうちに基本動作を怠っていた。 初戦がボロボロだったのも、リレーで細かいミスが多かったのもそういう部分に一番の原因があったように思う。 外国でも直進は日本と同じように使うし、地図読みもいつもと同じタイミングで行うのだ。 いつでもどこでも基本を忘れてはいけないと改めて痛感した。

長期的な取り組みが必要

私がユニバを目指して取り組んだのは2ヶ月だったので大幅なフィジカル面強化が間に合う時期ではなく、技術的な向上・調整が主となった。 しかし大会に出てみて、やはり第一にフィジカルのタフさを身につける必要があると感じた。 つまり、ユニバで結果を出すためにはもっと長いスパンで取り組んでいかねばならない。 ユニバを目指すgo for 2004‐MLでは実際そういう話も流れていたが、当時の私はその話を自分とは次元の違うこととしか捉えられなかった。 代表に決定して初めてその必要性を感じたが時既に遅し。 情報を耳にしていただけにそれを我が身のこととして活かせず惜しいことをした。

次回以降のユニバを目指す人には、私からも言いたい。 ユニバで結果を出すには代表に決まってから準備をするのでは間に合わない。 もっと長いスパンで取り組んで、代表に決まった時には既に体作りが終わっていて あとは技術向上・調整のみをすればいい状態にしておくのが理想である。

読図力と方向維持能力>

今回、技術の中で海外選手と比較して特に足りないと感じたのが読図力と方向維持能力だ。 読図力に関しては出発前に既に気がついていたのだが、十分な取り組みをせずに本戦を迎えたことには悔いが残る。 「瞬時に的確な判断」と「走りながらの読図」が出来るように、机上・実地の両方の練習が必要だ。 また、海外の選手と併走する際、白い所ではついて行けるスピードなのだがヤブの中では確実に置いて行かれた。 彼女たちはヤブに入っても何度もコンパスを見たり止まったりせずに方向もスピードも維持しながら走り続ける。 これにはある程度慣れが必要なので、山に入る機会を増やして意識的に取り組む必要がある。

ミドルやスプリントに関して

種目を決める時点でsprintを経験したことがなく、それだけで苦手意識があり敬遠したのだが、 直後に静岡でのsprintを走ってみて「これはこれで面白い」と感じた。 何事も挑戦する姿勢は大事だ。 Long、Middle、Sprintとそれぞれ要求される技術が違うが、観戦していて全部が魅力的に思えた。 世界大会は日程が詰まっている為、複数の種目に出場するには連戦に耐えられる体力が必要だ。 最高のパフォーマンスを考えるならば、ある程度種目を絞ってそれに合わせた練習も必須であろう。 直前になって慌てることのないように自分の適性や好みを把握しておくといい。

チームに対する要望

現地に同行してくれたオフィシャルが3人もいて、非常に助かった。 特に女性のオフィシャルがいると精神的にも安心でき、落ち着けた。 また、皆でマッサージ大会を行ったりしてコミュニケーションをとる機会も多く、良いチーム環境だった。

今回はセレから本戦まで2ヶ月だったこともあり強化合宿が頻繁にあったが、これは短期集中で技術力を鍛えられて効果的だった。 メニューでは特にファシュタやチェイシングが多く、周りに人が大勢いる中での競り合いの練習が積めてよかった。

最後に

オフィシャルの加賀屋さん寿理さん尾上さん、合宿の度にサポートしてくださった西脇さん金子さんをはじめスタッフの方々、 一緒に頑張ったチームメイトの皆さん、松澤コーチ、そして日本で壮行・応援してくれた大勢の方々に支えられて遠征を終えることが出来ました。 本当に感謝しています。 不甲斐無い結果でしたが、得たものは多かったです。 この遠征は絶対に無駄にはしません。

帰ってきた今、まだまだ自分には改善点が残されており、今後が楽しみだと思える。 世界との差は大きいものだったが、世界を見たら目指したくなってきました。 先は長いが、いずれ挑戦する目標になったことは今回の遠征での一番大きな収穫だと思います。

以上で私のユニバ遠征報告は終わりです。またいつか、このような報告書を書けるような選手になりたい。


一覧へ戻る