第14回世界大学オリエンテーリング選手権大会報告書

寺垣内 航
2003年度 早稲田大学卒

報告


内容

  1. ユニバーの感想
  2. ユニバーまでの準備
  3. レースの結果に対する評価
  4. 反省
  5. チームに対する要望
  6. 今後の自分の目標

ユニバーの感想

今回のユニバーシアード(以下ユニバー)は私にとって初めての海外でのオリエンテーリングであった。 レースの結果はとても厳しいものとなり、世界への厚い壁を感じることとなった。 思うようなレースができずとても悔しい思いをした。 しかし、そのような中でもたくさんの初めての経験(日本にないようなテライン、海外選手との併走など)をすることができ、 今後のオリエンテーリングの取り組み方への指針、今後の更なるレベルアップへの可能性を感じることはできた。 またユニバーシアードというレベルの高い国際大会を一緒に目指し、練習し、支えてくれた多くの仲間、コーチと出会うことができて本当に良かった。

ユニバーまでの準備

ユニバーへの意識

ユニバーを強く意識したのは3月のインカレが終わってからで、それまではインカレに照準を合わせてトレーニングを進めていた。 インカレが終わってからは選考会の準備をしつつも、自分が代表になった時のことを考えて、海外の地図を読んだりして準備をしていた。 選考会で代表に決定してからはよりユニバーへの意識が強くなり、実際にチェコの地図、写真を見たり、過去のユニバーの報告書をもう一度読み直したりした。 またユニバーセレ現在の自分のオリエンテーリングを分析し、課題と練習計画などを立てたりして、より具体的な準備を進めた。

ユニバーへの目標

初国際大会であり、具体的な目標は非常に立てづらかった。 目標の前にまず出場種目を決めた。 今回のユニバーは日本選手の目標として設定しやすいMiddleの予選がなく新たにSprintが入り、個人戦としては3種目となった。 自分は距離が長いコースの方を得意と考えていたこともあり、個人戦としてはLongとMiddleに出場することを選択した。 また今回のユニバーチームはRelayで特に良い成績を残したいということで、大会やユニバー合宿中にセレクションを設け、またミーティング時に綿密に走順などを話し合い、日本にいる間にRelayのメンバー走順を決めていた。 その結果私は4走を走ることになった。 あまり1走などで競る経験をしていないこと、決してスピードがある方ではないこと、落ちついて周りを意識せずレースを進めた方が良い走りができそうだ、ということなどが理由で4走に決まった。

各レースの目標は、Long、Middleに関しては距離、ウィニングタイムを見て、自分が良いレースをすればこのぐらいの時間で回れるのではと考えて、目標タイムを設定した。 Relayに関してはチームとして入賞を目標に掲げており、前回の結果から一人当たりトップタイムに対して+5min以内であれば、入賞に近い戦いができるのではないかと考えた。 この3種目の中では特にLongとRelayに力を入れたいと考えていた。 MiddleはRelayの前日ということであまり無理はしないように考えていた。 具体的には目標を

Long:125%以内(ウィニング85min)

Middle:125%以内(ウィニング35min)

Relay:8位以内

とした。

ユニバーへの課題(自己分析)

ユニバーセレを終えた直後に自分のオリエンテーリングを再確認するために自己分析してみた。 できないこと、得意なことを分析し、できないこと(課題)に対する練習方法を考えてトレーニング計画を立てた。

まずユニバーセレまでの自分のオリエンテーリングスタイルについて振り返ってみた。

このようなオリエンテーリングスタイルということもあり、ショートよりもロングの方が得意で、 平らな所よりもアップダウンのあるテラインの方が得意だと思っていた。 実際現役時代の成績を見てもショートは苦手だということがわかっていた。

そのようなオリエンテーリングスタイルは良いところもあるが、より上のレベルを目指すこと、 海外でのオリエンテーリングだということを考えて、課題とそれに対する練習方法を設定した。 自分のオリエンテーリングは一定のスピードで走り地図、コンパスも良く見るためミスは少ないが、その分スピードが遅い。 もっと速く(けっして走力面だけのことではない)で尚且つ正確なオリエンテーリング (ラフ&ファインなオリエンテーリング)ができないと世界には通用しないと考えた。 そのために考えた課題とそれに対する練習方法として、

C.Pを減らすためC.Pの簡略化、高次化。よりシンプルなプラン。
机上で特にチェコの地図を使って練習。あとはレース後の復習でこのC.Pはいらなかったとかの検討。
遠くを見てC.Pをとらえる
現地でひたすら遠くを見る練習
ラフ&ファインにおけるラフ区間の意識
練習会、合宿でスピードを上げてラフ区間の練習。レース後もここはラフに行けたのではないかと検討。
歩測
特に道走り、特徴物がない所では必ずやる。ロードでのトレーニング時にも練習。
集中した地図読み
机上で時間を決めて集中して地図読み。
ポスト周りの地形のイメージ強化
ポスト回りでスピードを緩めるファインへの切り替えを意識。

ということを考えた。

ユニバーまでのトレーニング

ユニバーまでの半年間のトレーニング量であるが、

1月 2月 3月 4月 5月 6月
時間h 35 51 24 28 30 11
距離km 302 392 216 234 240 84

というようなトレーニング量だった。 2月はインカレに向けて変則的に8割くらいが山でのトレーニングだった。 6月は出国日(6/19)までのトレーニング量で渡航準備などもありトレーニング量は落ちている。

1週間のトレーニング内容であるが、

曜日 内容
月曜日 筋トレor休養
火曜日 jog or持続走
水曜日 筋トレ+jog or持続走
木曜日 速い持続走orインターバルor坂道トレーニング
金曜日 筋トレor休養
土曜日 オリエンテーリングorマラニックor LSD
日曜日 オリエンテーリング

大体このようなトレーニングを毎週こなした。 平日はロードでトレーニングをして、2日ほど軽いトレーニングまたは休養を設けて、平日に1日負荷の高いトレーニングをした。 土日は山で時間の長いトレーニングをした。 その他気分転換、故障時のトレーニングとしてジム、プールを活用していた。 机上のトレーニングとしては、チェコの地図を使ってルートチョイス、プランニングの検討、お絵かきなどを行っていた。

レースの結果に対する評価

Long distance 133'31(161%)

ヤブの中の岩石群の中の岩などという難しいコントロール箇所にかなり苦戦し、大きなミスが何箇所もあった。 体の調子が悪かったのか、初の海外レースで精神的に疲れたのか、序盤から多少抑えて走っていたにも関わらず中盤から体力切れ状態になってしまい、レース後は心身ともにかなり疲れ果ててしまった。 ヤブの中のオープン(明るい所)をもっと上手に使えればよかった。 またロングということを考えてもっと戦略的なルート(後のことを考えて頭、体を休ませるようなルート)を選択すればよかった。 ロング対策として長い距離を走るだけではなく、地図を読みながら長い距離を走るトレーニングが必要だと感じた。

Middle distance 54'49(146%)

Longよりは速いレッグはあったし、走れたが、分単位のミスが5箇所もあり非常にミスの多いレースだった。 ヤブの中や微地形地帯のコントロール箇所でのスピードの切り替えが上手くできなかった。 また負荷をかけすぎて地図が十分読めていなかった。

Relay 4走51'26(138%)

Long、Middleの反省を活かせたこと、Relayに一番力を入れていたこともあって3レースの中では一番良いレースができた。 ミスもLong、Middleのような分単位の大きなミスはなかった。 1分近いミスが何箇所かあったこと、序盤から安全策を取って守りのルートに徹したことを差し引いても、まだまだ入賞する国の選手とは差があり、根本的なスピード

の違いを感じた。

反省(今後のアドバイス)

私の場合あくまでインカレの延長線上にユニバーがあり、ユニバーに対する長期的プランが欠如していたことは否めない。 インカレ前に追い込みインカレにピークを持って来られたとは思うが、その後選考会に通過して日本代表となり、さらにトレーニングしなくてはいけないという考えが常にあり、疲れをためることになってしまった。 その疲れはなかなか取れず、結局海外に行ってからも疲れは取れなかった。 明らかに無理な計画を立ててしまった。

技術に関しては自分のオリエンテーリングの課題を洗い出すことは、さらなるレベルを求めるには必ず必要なこととなってくることだと思う。 しかし、今回選考会から約2ヶ月と非常に短期間であったことを考えると、やはり選考会当初からのレベルアップはあまり望めないと考えた方が良く、自分のオリエンテーリングを維持して体調を整えることがまずは優先だった。 そのことに早々に気付き、加賀屋さんとも相談したりして、やはり自分のオリエンテーリングに少し上積みしてユニバーも戦うしかないと5月初旬くらいに考え直したが、一度自分のオリエンテーリングに疑念を抱いてしまっては、なかなかその迷い、不安を打ち消すことができず、自分では割り切ったつもりではあったが心の奥底ではその迷いは残っていたのだと思う。 結局自分のスタイルを貫けなかった、それはすなわち自分の力をユニバーで出すことはできなかったことを意味していると思う。

それらの反省を踏まえて今後のアドバイスとして、6月という早い時期にユニバーがある時は選考会時での実力を維持すること、コンディションを整えることを心掛け、地図読み、メンタルでの準備に重点を置いた準備をするのが良いと思う。

また海外で非常に感じたこととして、日本のほとんどのテラインは起伏が激しく、なかなかスピードが出ず、じっくりとナビゲーションをしてミスしなければ良い結果が得られることが多い。 それに対して海外(ユニバーはチェコ)は非常に走りやすく、アップも日本と比べて少ないのでスピードが出やすく、高速ナビゲーションを必要とする。 ユニバー合宿でもそのことを意識して、高負荷のメニューが用意されていたのだと思うが、そういう高負荷、高速の中でのナビゲーション能力を鍛える練習を長期的にやらないといけないと強く感じた。

チームに対する要望(合宿、コーチング、スタッフの体制など)

加賀屋さん、寿理さん、尾上さんには合宿、現地でと本当にお世話になりました。 またユニバー合宿では多くのスタッフ、トレーニングパートナーの方にお世話になりました。 ありがとうございました。 このような代表合宿に選手として参加したのは初めてであり、海外に行く前から初めての経験をすることができ、本当に収穫の多い有意義な合宿でした。 特にチェコのような走りやすい高速の中でのナビゲーション能力を上げるメニューということで、リレートレーニング、チェイシングインターバルなどは本当に良い刺激になりました。 メニュー内容で一つだけ要望を上げるとすれば、Long対策の長いコースがあれば良かったかなと思いました。 (ユニバーの14.4kmに備える長さ)Middle、Sprintの対策になるメニューはあったので。

今後の自分の目標

レースの結果、レース内容は本当に情けなく悔しいものとなった。 このまま負けたまま終われないと強く感じた。 また世界に挑戦したいと思うには十分過ぎるほどの刺激をもらった。 今後の自分のさらなる可能性を信じて、試行錯誤しながら長期的なプラン、ビジョンのもと次の目標に向かって精進して行きたい。


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