ユニバーシアードという世界の舞台に挑戦できることは私にとってとても魅力的で憧れであった。 ただ圧倒され続けたJWOCから3年が経ち、自分がどれだけ成長したのかを知りたかった。 しかし、準備に準備を重ねて挑んだ学生最後のインカレで満足の行く結果が残せなかったことにより、 オリエンに対して恐怖心が生まれ、セレ前に国家試験等が重なった事でユニバーに向けてのモチベーションが下がってしまった。 4月になってようやくこのままでは終われないという気持ちが大きくなりセレに臨んだ。 学生時代はインカレという言わば大きな節目の様なものがあり、自分のオリエンテーリングと向き合うことができるが、 卒業してその様な明確な目標を持てなかった自分にとって、ユニバーはインカレに代わるワクワクできる良い目標になった。
去年一年間のトレーニングについて以下に示す。
月 | 回数 | 総時間 | OLトレーニング時間 | Rest | 怪我や故障で休んだ日数 |
---|---|---|---|---|---|
9月 | 13 | 9.2hour | 0hour | 18days | 2days |
10月 | 20(5) | 25.4hour | 6.9hour | 12days | 2days |
11月 | 17(5) | 25hour | 4.7hour | 13days | 5days |
12月 | 20(8) | 18hour | 11hour | 9days | 2days |
1月 | 20(4) | 20.1hour | 3.2hour | 10days | 2days |
2月 | 17(4) | 9.5hour | 5.1hour | 9days | 3days |
3月 | 10(4) | 5.4hour | 3.3hour | 20days | 3days |
4月 | 17(5) | 14.2hour | 6.1hour | 8days | 6days |
5月 | 21(11) | 17.9hour | 9.6hour | 8days | 6days |
6月 | 20(10) | 18.3hour | 10.0hour | 8days | 2days |
7月 | 22(6) | 17.7hour | 5.0hour | 10days | 0days |
8月 | 8(4) | 4.2hour | 3.1hour | 9days | 0days |
代表に決まってからは、仕事で時間に融通がきかない中、短時間でもいいから集中して毎日行うというスタイルに変えた。 また、合宿等で明らかにOLトレーニング時間が増えた。そのため、実践的なトレーニングが中心となった。
目標: 生活のリズムに慣れること、トレーニングの時間をうまく取り入れること
社会人となって環境が変わり、トレーニングに確保できる時間や場所が限られる様になった事で苦労が多かった。 とにかく生活の中にトレーニングを組み込もうと通勤ランをしたり、仕事後まっすぐ帰宅せず走るという習慣をつけた。 勤務先が山の上だったので慣れるまでは辛かったがいいトレーニングになった。
目標: 走力、特にスピード持久力の強化
毎週最低1回はスピードトレーニングに取り組んだ。 私は、スピード系のトレーニングが嫌いで一人でやると絶対に追い込めないと思ったので現役学生にトレーニングパートナーとなってもらった。
また、この頃から朝練として週に1回スプリントを取り入れた。 この朝練のおかげでコンパスワークやポスト周りの動き、ルートプラン等スプリントに対する苦手要素が少しずつ薄れていった。 しかし、体幹や脚の筋肉が伴わない内にトレーニング量をあげたので、膝を故障してしまった。 これに対しては早めにきちんとケアをし、長引く故障には至らずに済んだがもっと自分の体について知っておく必要があった。 合宿で吉田勉さんのランニングクリニックを受ける機会に恵まれ、 自分の走り方や弱点を知ることができ、その後のトレーニングに生かすことができたのは大きな収穫であった。
目標: simplify、オリエンテーリングの量をこなす
毎週末、大会や合宿で遠征していた。 特に、数少ないチャンスであるスプリントの大会をこの時期に2度も経験できたことはよかった。 5月から始めた朝練の成果を感じることができて精神的にも良かった。 オリエンテーリングの量は右上がりに増えていったが、この頃から毎週毎週東北から一人で遠征することが辛く負担になっていった。 多くの時間とお金をかけて遠征しても、うまくいかないことが多いと自分が何のためにここまでしているのかわからなくなる時もあった。 一時は合宿を選んで参加することも考えたが、ユニバーまでの限られた期間でそれに見合う準備をするにはオリエンテーリングの量の確保が必要であったし、私にとっては合宿に参加することがモチベーションを維持する要素であったので、合宿だけは全て参加する様に努めた。
ユニバー女子メンバーのほとんどは実力が均衡していていたために、お互いがよきライバルとして競り合えたのはよかった点であると思う。 オリエンテーリングの量をこなす中で気をつけたことは、反省の際に文字にして書くという作業を怠らないこと、ただ量をこなすだけで雑になってしまわないことである。 この事で合宿を終える度に何かを掴み、それを次に生かすという作業の繰り返しができた。 しかし、体調が気圧に左右されやすく、6月は毎日頭痛とめまいに悩まされた。 そのため平日のトレーニングは量を確保できなかった。
目標*疲れをためない、怪我をしない
初旬の合宿で身体のキレが悪く、トレーニングの成果が現れてこないことに焦りと不安を感じ、また平日のトレーニングでも常に身体が重かった。 6月に体調を崩しながら無理をしたのもあり予想以上に身体が疲れていたのだと思う。 そのため、中旬からは疲れを抜くことがトレーニングと割り切ってあまり無理をせず、 週1回のスピトレの他は30分~50分のjogとし、疲れている時は休むことにした。 その代わり、きちんとバランスの整った食事をとること、睡眠時間を確保することに徹した。
リレーメンバーの選出については予め話し合った方法で2人は決定していたが、残り2枠を誰が走るかで最後まで話し合いが続いた。 結局、石山、森澤、千葉の3人がリレーを走るつもりで準備をし現地で最終決定をするという方向になった。 メンバーを早々と決め志気を高めるという方法もあるが、今年のユニバーにおいて私の見解を示すと、現地で決定するという方法が一番良かったと思う。 誰にも可能性があると思えることでリレーについて真剣に考える動機付けになるし、選出方法についての話し合いを通し、 お互いの現在の状況や気持ちを知ることができたのは本当に良かった。
トレキャンは①地図と自分の感覚のズレを確認する②地面の感覚の確認ということを目的として行った。 やはり、方向維持が課題。 特に脱出する時に体の向きがずれないように気を付けた。
初めてトレーニングに入ったのがカルストテレインで、ドリーネをよける内に方向がずれ対応がうまくいかなかった。 全体的に走りやすくスピードがびゅんびゅん出てすごく楽しい!その分、岩がちなところではスピードが落ちてしまうことにストレスを感じた。 当初、カルストテラインには1回だけ入る予定にしていたが不安が残ったのでもう一度入ることにした。 2回入ったことによってカルスト地形への苦手意識が少し軽減したことは良かった。
地図を持ってスプリント会場をウロウロしても良いことになっていたので、オフ日に観光がてら下見に。 コントロールが置かれそうな位置をあれこれ話しながら通れる道、特徴物、地図表記などを確認。 博物館も観光。 この博物館に本番ではコントロールが置かれ、一度行った場所ということでアタックでの不安が除かれた。
イベントセンター(EC)がオープンするまで食事は自分たちでケアする必要があった。 近くに大きなショッピングセンターがあり、足りないものはほとんどそこで揃った。 パン、チーズ、ハム、果物、野菜丸かじりで過ごし、夕食はショッピングセンターに通った。 朝も昼も火の通ったものが食べられなかったので、夕食に温かいものが食べられてよかった。 他には、意識して水をちびちび頻繁に飲む様にしていた。 ECがオープンしてからは、野菜とフルーツを多く摂取する様に心がけた。 朝と昼はたくさん食べ、夜は食べ過ぎにならない様に気をつけた。
- | Place | Cruising speed index | ||
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JWOC2003 | WUOC2006 | JWOC2003 | WUOC2006 | |
Sprint | - | 55/61 | - | 132.7% |
Middle | - | 67/74 | - | 189.3%(157%) |
Long(Classic) | 119/124 | - | 210% | - |
Short-q | 41/44 | - | 201.4% | - |
Short-finnalB | 54/66 | - | 180% | - |
Relay | 42/44 | 15/15 | 190.9% | 192.0%(137.4%) |
JWOCの成績と比較すると出場している種目は違えども、トップとの差が縮まっているのがわかる。 また、ミドルとリレーでは大きくミスをした1レッグを平均するとそれぞれミドルがトップ比157%、リレーでは137.4%であった。
経験年数を積んだのもあるが、ユニバーにおいてはトレーニングを数値的に管理し、レースにおいて取り組むべき課題・目標をより具体化することができる様になったためにJWOCからは大きく進歩することができたと思う。 また、私にはまだまだできないことがたくさんあるので、それらをクリアすることで可能性が大きく広がっている、という事を直に感じる事ができた。
「守りに入らずに自分のレースをする」という目標は達成された。 ミスをするのを恐がってレースを終え、ゴール後に何となく煮え切らない思いを抱くのが嫌だったので、とにかく今自分の持てる力を出すことができて良かった。 ミスもたくさんしたが、結果を得てやはりこれが今の自分の実力なのだと思う。 また、全体を通しては、国内合宿でリレートレーニング等の集団の中で走るトレーニングをたくさんしていたため、 他の選手の流れに乗りながらも、進む先を正確に判断するということが自然とできていた。
一番思い入れの強かったリレーで1箇所大きなミスをしてしまったことが心残りである。 後半は自分の苦手な高さの意識が要求されるレッグが多く組まれていた。 前半で自分をうまくコントロールできていたのでそのまま後半に突入してしまったが、もう少しリスクを考えて走る必要があったと思う。 ミスをしている間中、待っていてくれる仲間の顔が何度も頭をよぎった。 リレーは4人で走るものだから個人戦とは違う。 確かに個人がベストのレースをすれば、結果として良いものが得られるはずだが、 自分にはリスクへの対処という点においてチームで走ることへの意識が足りなかった様に思う。
他の国の選手の走りを見ていると、山での走り方、特に障害物の除け方がうまくロスがなく、フィジカルの強さを見せ付けられた。 私がつまずいて転んでいる間にも、彼らはうまくかわして横を走り抜けた。 会場でも筋肉チェックをしてみたが、女性選手のふくらはぎでも日本人男性選手の太ももくらいあり驚いた。 体格が大きいのもあるがそれだけではないと思う。 これからしっかりとした体幹・足の筋肉を鍛えていく必要があると感じた。
日本との違いで一番困ることが出てくるのは食事であると思う。 ストレスなく過ごすためにも日頃からなるべく何でも食べられる様にしておくといい。
国内合宿の回数が多かったのは良かった。 チームメイトと毎週の様に顔を合わせることができて楽しかったし、モチベーションが保てた。 間隔を空けずに集中して自分の課題に取り組むことができた。 また、都合で出られないことがある選手にとっても何度もある合宿から自分で選んで参加することもできるので良かったのではないかと思う。 これからも続けて欲しい。
今回、東北から合宿に参加したのは私一人だけであったが社会人であるとは言え、遠方での合宿は経済的、時間的に大きな負担となった。
今後、地方からユニバー代表入りを目指す人たちのため、参考までに費用を示す。 国内合宿でかかった費用は純粋に交通費だけで\89170、合宿参加費を含めると\139970にもなる。 (合宿全7回)それも関東から車に乗せていただいたので実際には負担する必要のあった額の半分程だと思う。 この他にも食費、渡航費、エントリー費等がかかる。 私でも毎月のやり繰りに苦労したので、学生であれば両親や周りの援助といったものが少なからず必要になると思う。 この様な経済的負担が地方から世界を目指そうという若い選手にとって大きな壁となることは必至である。 この壁によって世界を目指そうとする若い選手が減ってしまったら、本当に悲しいことだ。 地方から世界での活躍を目指す若い選手のためにも、これから、何らかの援助を求める。 また、苦労した経験をした者として東北からより高いところを目指そうとする学生たちの力になりたいと思う。
これからはこのユニバーで得た経験を心に刻んで、まずは体を作ることから始めるつもりだ。 このユニバーでの経験から今の自分に足りないものを少しずつ獲得し血や肉としていって、まだまだレベルアップして行きたい。 そうしてまた世界に挑戦するチャンスを掴んでいきたい。
最後になりましたが、ユニバー期間中、私たちのためにご尽力下さった尾上さん、合宿で大変お世話になった西脇さん、NTの皆さん、サポーターの方々。 そして応援して下さったクラブの皆さん、東北大・MGの後輩、同期、OB・OGの皆さん。 無事にユニバーを終えられたのも皆さんのおかげです。 本当に感謝しています。ありがとうございました。
そして、何より刺激し合ってきた海老君や中島さんも含むチームメイトの皆さん!辛い練習でもみんながいることで励まされ、本当に楽しく夢のようなユニバーライフを送ることができました。 ありがとう。これからも宜しく!