第16回世界大学オリエンテーリング選手権大会報告書

高田 弘樹
東北大学


内容

  1. はじめに
  2. ユニバーへの準備
  3. 現地入りしてから
  4. レースに対する評価
  5. 今後へのアドバイス
  6. さいごに

はじめに

春インカレも終わり、4年では基礎体力からほどほどに鍛えてインカレロングを迎えようというくらいの関わり方を考えていた。春インカレ後あたりから足底筋膜炎も患っていたので。

選考会のスプリントでは立禁を通った上でのすっきりしない選考だったので、あえて自分を選んでくれた状況をしっかりと考えてスプリントで結果を出すことを第一の目標とした。自分のプランとしては、エストニア出発直前のレースくらいで周りのレベルに追いついて本戦で結果を出すつもりだったが、一回目の合宿でそんなゆっくりしたことは言っていられないと思うようになり少し焦りが出た。また、合宿などを繰り返すうち、ロングも出る可能性があるからには準備をしなきゃいけないという気持ちになっていき、スプリント一本勝負という初めの意識は徐々に変わっていった。結局それは一兎をも得ずという状態になってしまったので失敗だったとは思うが、トレーニングをこなす中でロングにも興味が向いてしまうのは仕方のないことだったと思う。そのときの自分の状況をみる冷静さとユニバーへの情熱のあいだでよくよくバランスをとる必要があり、そこはとても難しい課題だとも思った。

ユニバーへの準備

トレーニングメニューとしてスピトレ、LSD、アクティブレスト(jog)、完全レスト、オリエンを週1日ずつ盛り込むようにした。

スピトレは(100m・200m・400m)×4,5セットや400m×10本、Ⅰkm×5本など。LSDは普通に走るもの以外にもエアロバイクを100分以上こいだりした。過去の報告書からオーバートレーニングに一番気をつけなければいけないと思っていたので、完全レストは週末が合宿のときはその前後に入れた。合宿がないときでも毎週必ず入れた。

上記の主なメニュー以外にもイレギュラーにプールやエアロバイク、トレーニングルームでの筋トレ、ハーフマラソン、登山などをした。ストレッチは毎晩、足底の筋トレも週3,4回のペースでやったが足底筋膜炎には最後まで悩まされた。

体力的なトレーニングのほかには、過去の報告書を少しずつ読んだり、YouTubeで海外選手がオリエンしている様子を見たりしてイメージを湧かせていった。地図読みは東北大の部室に蓄積されている海外の地図を読んだりしたが、それは月に数回程度でほとんどしていなかった。が、現地の地図読みをあまりしないのはいつもどおりなのでそんなに気にしなかった。

現地入りしてから

初の海外なので少しでも海外に慣れようと、トレキャンの前に現地入りして自主トレみたいなことをする朴峠さんと米谷さんのプランをパックすることにした。

事前トレは5日ほどあってだいたい1日1テレインのペースで入った。わりと宿に近いところにテレインが多く便利だったが、尾上さんたちと合流するまではジョグでの移動だったのでいつのまにか疲れが溜まってしまっていた。事前トレをしたおかげで、現地のテレインの様子や注意すべき点を体感でき海外への不安のようなものは大分減ったと思うし、

時差ボケも早々に終わらせられた。自分にとってかなりのプラスになったのは確かだが、疲れを溜めてしまったり食いすぎたりとコンディショニングでもう少し高い意識を持つべきだったという反省も残った。

事前トレ、トレキャン共に等高線間隔5mの地図があまり存在せず、2.5mで慣れてしまったために本戦に悪影響が出てしまったとロングのあとに感じた。縮尺はまだどうにかなると思うが、トレーニングの段階で等高線間隔にはもう少し敏感になっていたほうがよかった。また、地図がわりとイカで地図精度を疑いながらトレーニングをしたというのも期待したトレ効果を得られなかったことにつながったと思う。

レースに対する評価

スプリント 64位 16:59.1 トップ比126%

コース自体は日本でもありそうな一般的なスプリントだったと思う。しかし結果は惨敗だった。自分が感じた敗因は緊張とオーバーペース。

スタートフラッグまでの誘導が会場に飛び出すかんじのレイアウトで、まずそこで緊張してしまった。誘導中にプランしていた方向に人が(そのときの印象としては、たくさん)いて、とっさに方向をかえた。2ポまでは多少ふらつきながらもポスト位置が簡単なこともあって無難にとっていたが、まだ冷静になっていない3ポでまた会場に戻ることになる。このアタックでミスをして、かなりテンパってしまい4ポへの脱出もアタックもミスをして取り返しがつかなくなった。もはや冷静でなくなった自分は遅れを取り戻そうと、4ポでちょうど追いつかれた(おそらく)1分後スタートの選手にオーバーペースと感じながらも必死でくらいつこうとした。その選手は9ポの脱出で見えなくなったが、結果としてレース終盤では疲れ果てて地図が全く頭に入ってこなくなってしまった。

緊張は慣れによって多少軽減できるはずで、会場がスタート・ゴールになっているようなスプリント大会があれば積極的に参加するとよいと思う。イメトレが有効なことは間違いないが、実際に参加して緊張する経験を積んだほうがより効果的なはず。

オーバーペースを防ぐには当然だがまず体力の充実から。それでもスプリントではなおさらオーバーペース気味になってしまうはずなので、スピトレと地図読みを組み合わせたようなトレや、NTクラスの選手とチェイスしながらレースをする機会があると良いと思う。今回は5月中旬にそういった機会があったが、実際にはもう少し直前の合宿でも速さを比較したいとは思った。

現状では東北に比べ関東と関西で頻繁にスプリント大会が開催されているので、スプリント代表を狙うそれらの地域の選手は恵まれていることを認識して積極的に参加してほしい。

ロング 72位 2:30:37 トップ比185%

非常にお粗末な結果だった。序盤はミスりながらも焦ることなく淡々とできていたが、中盤の14ポ以降ミスが増えてきてそのままズルズルとゴールしてしまった。

最後まで地図の精度がよくわからないままだった。それに加えヤブで視界が遮られるため自信のないオリエンをしていた。湿地はトレキャンの段階から感じていたとおりあまり気にせず突っ切るとそんなにロスはなかったように感じる。というよりトレーニングで入ったほどのひどい湿地がまずなかった。

自分が最も海外選手との差を感じたのは不整地での走りで、CよりのBヤブみたいなところなんかはパーッと差をつけられてしまった。後ろから見ていた感じとしては体幹がしっかりしているという印象。

今後へのアドバイス

具体的なアドバイスはほとんど書いてしまったので、チームとしての成績の向上のために選考方法に関して提案してみたい。

ユニバーへの準備期間として4ヶ月間は決定的に短いと思う。それまでに個人で全くトレーニングをしないというわけではないはずだが、過去の報告書などを見ると実際に選考されてからようやく本格的に準備し始める人が少なからずいる。そのためかトレーニング量の急激な増加により怪我などをする選手も多くいるように感じる。かく言う自分もユニバーへの意識は4月から持ち始めたが、目標に届くために必要なトレーニング量と可能なトレーニング量との間にもどかしさを感じた。

そこで選考をもっと前の段階から始め、サッカーの代表のように一次選考と最終選考としてはどうかと思う。(来年のJOWCのスプリント代表選考ではそのような方式がとられるようだが。)具体的には本戦の1年くらい前に一次選考を行って広く代表候補を集め、3ヶ月くらい前に最終選考で出場種目まで決めてしまうとか。約1年を共に合宿に参加したりすることでチームとしての団結も強まると思うし、1年間という長期ならば急激なトレーニング増加も防いでケガ人を減らすことにもなると思う。自分は体調が悪いときでも、数が限られているということで無理やり合宿に参加していたが、そういったことも避けられるようになる。1年前から知っていないといけないということである意味で門戸をせばめることになるかもしれないが、それぐらいの覚悟でやらないとチームとして毎回同じことの繰り返しになってしまうのではないかと思う。成長株のために代表の枠を一つくらいあけておくなどの対応もできる。

8月のユニバーへの選考を4月に行う経緯を全く知らないのでそういったことが可能かどうかはわからないが、少なくとももう少し早い段階で選考をすることが必要だと思う。

さいごに

チームメイトには苦しいときに声をかけてもらったり、現地で一緒にリラックスしたりといろいろと助けられました。また、東北大学の部員・OBの皆さんにもトレーニングにつきあってもらったり壮行会を開いてもらったりとたくさんの応援をいただきました。さらに、西脇さん、尾上さんをはじめ合宿等でサポートしてくださった皆さんにはほんとうに感謝しています。ありがとうございました!


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